画質と音質にこだわるなら、Super HiVi CAST

スーパーHiVi CASTで復習するAVの基本
【特別編】セルレグザの絵

以下の記事の一部は2010年8月号(7月17日発売)に掲載したものです。

久しぶりのこの講座。今回は、基本5項目の調整方法に関するレクチャーを終えたところで、注目のテレビを使った実践篇をお届けしたい。用意したのは東芝のスーパーテレビ「CELL REGZA」55X1。26時間分のテレビ番組まるごと録画機能など、派手なテクノロジーに注目が集まりがちだが、「高画質」に注ぎ込まれた技や熱意も半端ではない。スーパーHiVi CASTによる調整で、55X1はどんな絵をみせてくれるのか?

Step1 まずコントラストの調整。白がまぶしくなく、各段階を自然に

 では早速調整を始めよう。今回ソース機器として使用したのは、パナソニックのブルーレイディスクレコーダーDMR-BW900。そのHDMI出力を東芝55X1のメディアセンターに接続してスーパーHiVi CASTの映像を映し出している。ソース機器側の映像調整機能は、ここでは一切使っていない。調整をはじめるにあたって選んだ、55X1の映像モードは「標準」。映像モードはいくつか用意されているが、今回は使用していない。東芝の液晶テレビには、設定メニューのなかに節電モードが用意されている。HiVi視聴室の環境では工場出荷状態の「標準」ではあまりに明るすぎるため、「減1」というLEDバックライトをあらかじめ少し落とした状態にセットしていることをまずお断りしておきたい。また、本機が搭載するLEDバックライトのエリアコントロールは、このテレビの素性を明らかにしたいという考えに基づき、オフにしていることもご報告しおく。できるだけ素の状態で、CELL REGZAに取り組んでみたいと思ったのだ。なお視聴室は全暗、視聴位置は3・5Hである。

 まずはじめに行なうのはコントラストの調整。スーパーHiVi CASTをBDレコーダーに装てんしたら、メニュー画面から目的のコンテンツを選んでジャンプしよう。ここではナレーションを聞きながら、現状を確認しておく。画面はやがてチャートに変り静止する。ここが調整画面だ。55X1の標準モードでは、コントラストに相当するパラメーター「ピクチャー」は100に設定されている。画面を見ると、この100の状態でチャートの各段階はきちんと見えており、このままで白とびの心配がないことがわかる。液晶テレビの多くにいえることだが、本機も100%を越えて入力される輝度信号はすべて、その頭を100%として表示するタイプのようだ。これはチャート上のSuper Whiteの文字が判別できることから判断がつく。こうしたモデルの場合は、コントラストを最大にしても、Super Whiteの文字は消えないので、ここで深追いはせず白の各段階がきちんと判別でき、もっとも明るい白がまぶしすぎない程度になるよう調整しておけばよい。その結果、ここでの設定値は70となった。

Step2 Super Blackの文字が見えている状態はダメ。それでは黒が浮いている

 次に黒レベル。再びトップメニューに戻るか、チャプターを送っていくかどちらかの方法で、目的のコンテンツに進もう。ここでもまずは、女性モデルの映像で現状を確認。しばらくして、「ブラックトンネル」と名づけられた黒レベル調整用チャートで静止したら再び調整開始だ。黒レベルの調整は、かなり微妙なものになるので、できればこの状態で5分くらいは調整者の目を慣らしたい。

 さて、ここでのポイントはSuper Blackの取扱い。LEDバックライトの部分制御を切り、節電モードを「減1」にした55X1では、初期値(0)のとき、Super Blackの文字はまったく見えなかった。Super Blackの文字は、0%以下の黒レベルとして記録されているので、テレビが正しく調整されているのなら、本来見えない部分。だからこの状態の55X1は一面では正しい。しかし、注意深くこの「ブラックトンネル」チャート見ていくと、0%と1%、1%と2%あたりの暗さの区別がはっきりしていないことにすぐに気がついた。つまり若干の黒ツブレが起こっているというわけだ。そこでさきほどのSuper Blackの文字が浮き上がってこない範囲で、黒レベルの値を1ポイントずつあげてみた。すると+2程度で、0から2%あたりの区別がはっきりするようになってきてひと安心。このとき、もちろんSuper Blackの文字は判別できない状態。もし判別できてしまうなら、それは黒浮きを表しているので、ふたたび黒レベルを下げなければならない。

 こうして黒レベル調整を追い込んでみると、どうやら最適な値は+2か+3であることがわかってくる。チャートの見え方のみで決めれば+2だが、暗部情報を見逃したくない! というのなら、わずかに黒が浮き気味に見えるが+3も悪くないだろう。ここで、もし映像調整の基本5項目以外でやってみてほしいことがあるとすれば、それはLEDバックライトのエリアコントロールのオン。これを入れたあと、黒レベルを+10ほどにしてみてほしい。さきほどわずかに浮き気味だった画面全体がすっと落ち着いた印象になりながら、0%から2%程度の最暗部の階調がきちんと表現されたなかなかよい絵になる。注意したいのは、「ピーク輝度調整」をオフにしておくことで、これを怠るとハイライトの部分がピカピカに輝いてしまうからだ。

 液晶テレビにおける映像イコライジング、すなわち映像調整は、表示素子の振る舞いを掌中に収めることだと考えてきたが、バックライトコントロールもひとつのツールとして活用できることが、今回の取材を通して理解できた。

 なお、Super Blackに関しては月刊HiVi2010年2月号160ページに詳しいので、もう一度読み返しておいてほしいところだ。

Step3/4 次は色にまつわる調整。まず色合いから合せよう!

 コントラスト、黒レベルに続く3つめの調整は色合い。まだ、黒レベル調整用信号が表示されているなら、チャプターを送って、色合い調整用チャートを表示させよう。画面の中央と四隅にマゼンタ(赤紫)とシアン(水色)のチェッカーパターンが現れ、画面が静止したら調整用画面だ。ここでの調整には,スーパーHiVi CASTに同梱されているブルーフィルターを使う。このフィルター越しに調整チャートをのぞきながら、マゼンタとシアンのマスが同じ明るさになるようにするというのが調整方法。というわけで早速55X1で試してみると、+15付近で、マゼンタとシアンの境界線の区別がほぼつかなくなり、このあたりが色合いのジャストポイントだということがわかった。実際の動画を見ている限りはまったく気にならないが、55X1の映像モード「標準」は、画面全体がマゼンタ寄りになっているということなのだろう。調整の最大/最小値は+/-50である。

 そして、つづく色の濃さ(色レベル)では、ちょっと予期せぬことが起こった。色合いの調整チャートから、タイトル8のチャプター1へジャンプし、色の濃さを調整するチャートを表示させる。そこでふたたびスーパーHiVi CAST同梱のブルーフィルター越しにブルーとグレーのマスが描かれた調整チャートをのぞきこみながら色の濃さを調整するのだが、どうも様子がおかしい。どう調整してもふたつのマスの輝度がそろわないのだ。調整方向としては+なのだが、最大値の+50にしてもまだブルーとグレーの境界線が目についてしまう。現象としては、色の濃さをプラスにしていってもブルーが濃くならないということになる。そこで色の濃さをいったん0に戻し、別の方法を試すことにした。それが「カラーイメージコントロールプロ」を使った調整。この調整メニューには、映像設定→詳細調整→ カラーイメージコントロールプロで入ることができる。ここで基準色としてブルーを選び、色調整画面で色の濃さをプラスに調整してみようというわけ。ブルーフィルター越しに先ほどの色の濃さ調整用チャートをのぞきながら調整を進めると+19で、グレーとブルーの境界が判別できなくなった。

 CELL REGZA 55X1は、今回、映像調整のスタートポイントとして利用した「標準」モードに関する限り、ブルーが少し薄めの味付けとなっているのかもしれない。これは、あくまで仮説で、さまざまな液晶テレビについて検証する必要があるが、LEDバックライトは全体に青味が強いため、液晶パネルとしての青味は少し抑え気味にしてあるのだろうか。

 カラーイメージコントロールプロによって、ブルーの色味だけを濃くする。これまで、基本5項目の調整の補助として、このようなことは実施したことがなかったことから、ここでスーパーHiVi CASTに収録されているデモコンテンツや、映画BDソフトを何本か視聴し、確認してみることにした。そこで破綻が生じればこの調整方法はあきらめなければならない。

 だが、それは杞憂であった。このとき視聴したなかの映画の1本「フライトプラン」では、カラーイメージコントロールのオンとオフで同じシーンを見比べてみたが、オンの方があきらかにブルーがしっかりと表現されており、物語のなかの空間の冷たさや緊迫感が伝わってきたのだ。かといって、肌色に青味がのることもなくそこはニュートラル。一方、全体的に暖かみのある映画BD「プラダを着た悪魔」では、女優の肌の透明感がアップするような印象も得られて、調整前よりも映像がイキイキと感じられて驚いたほど。最近のテレビはデジタル化が進み、技術者の絵づくりの技もたいへん高度になっている。ピンポイントで色を変え、ごく狭い範囲の暗部階調を自由に抽出してみるなどアサメシ前だ。しかし今回、CELL REGZAで色の濃さを調整してみて、標準カラーバーを応用した映像調整のしくみが、そうしたテレビ1台1台に与えられている絵づくりの勘所を分析するのに今なおひじょうに有効な手法であることがわかった。CELL REGZAを愛用しているなら、ぜひ、このカラーイメージプロを活用して標準的カラーバーの応用による映像調整に挑戦してみてほしい。

Step5 元のソースにはない、偽信号の付帯に気をつけよう

 さて、基本5項目の調整に戻ろう。残された最後の調整は、シャープネスだ。調整用画面はタイトル10のチャプター1。ここでの調整のポイントは映像がシャープに見えるか? ではなく、テストチャートの図形の周囲、垂直、水平のいずれにも余計な信号がまとわりついていないか? ということ。つまり、いかに入力信号に忠実かを確認すればよい。調整に先だって、まずはシャープネス調整をプラス側最大、マイナス側最小、へと思い切ってうごかしてみよう。映像の調子がどのように変るかわかっただろうか? 次に、シャープネス最大付近からワンポイントずつ目盛りを下げていく。するとあるポイントで、ドット(画素)の並びで表現された白や黒の縁取りが消える部分があることに気づくはずだ。そこが判明すればシャープネスの調整は終了だ。今回のCELL REGZAでは、ー7がそのポイントであった。これより下げると、今度はボケているように見せようと、テレビ自身が偽信号を生成して調整用チャートに載せてくるのだ。

 さて今回、スーパーHiVi CASTによる映像調整を通して、じっくりとつきあった東芝のスーパーテレビCELL REGZA 55X1。これはやはりスゴいと改めて思った。とくに1%刻みの黒レベルチャート「ブラックトンネル」で見た暗部表現力。そして1ステップの調整に対してまったくリニアに応答するようすは、わずかな踏み加減の違いにもきちんと反応し、車体を思ったところにぴたりと止めることのできる、よいブレーキシステムを持ったスポーツカーのようだった。また、LEDバックライト制御にも舌を巻かざるを得なかった。CELL REGZAのようなテレビを想定して製作し、スーパーHiVi CASTのテスト信号集に収めた43から47のチャートでもほぼ破綻を見せることはなく、白と黒の美しいコントラストを描くだけだった。

 幸運にももしあなたがCELL REGZAのオーナーだったら、ぜひ一度、スーパーHiVi CASTでその卓越したパフォーマンスを体験してみてほしい。スーパーテレビのスーパーたる所以にきっと大きくうなづくことだろう。(スーパーHiVi CAST担当 K)


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