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HiVi CAST ハンドブック レッスン2



「黒レベル」調整の基本をマスターする

 連載2回目のテーマは「黒レベル」です。液晶方式、プラズマ方式。今、話題のフラットテレビは、このどちらかの方式になるわけですが、実は、どちらも「黒レベル」の調整が難しいという特性を持っています。その原理上、黒がグレーになったり、真っ黒になる直前でザラザラとしたノイズが乗ってしまったり。ここでは、そんな特性をカバーしつつ、DVDソフトに収められた映像のすべてを引き出すための「黒レベル」調整法をマスターしましょう!

 前回お届けした「コントラスト」調整はマスターしていただけただろうか? ディスプレイによっては、コントラスト調整を行なっても、思うように白のレベルが変化しないケースもあるのだが、そんなときはHiVi CASTの「ビデオチューンナップ」に収められている「RGBゲインアジャスト」チャートで調整してみよう。「コントラスト」で使うチャートよりも明るさの変化が広範囲におよぶので、調整による変化が把握しやすいはずだ。
 さて、「コントラスト」が決ったら、次は「黒レベル」調整。黒レベル、つまり映像の暗い部分は、テレビなどのディスプレイ装置がもっとも苦手とする表示領域のひとつだ。と同時に、エンタテインメントの代表である映画再生において、暗いシーンは実に多く、また重要な場面であることが多い。つまり、暗部あるいは黒レベルを正しく表現できなければ、映画の面白みを100%楽しむことはできないというわけだ。
 では、なぜ暗い部分の表現がむずかしいのだろう? それは信号レベルが小さいことに起因する。このことは、音にたとえると理解しやすい。明るい映像は大きな音だ。そして暗い映像は小さな音。小さな音は聞き取りにくく、よけいな雑音にまぎれやすい。オーディオアンプやスピーカーにも高性能なものが要求される。同様に暗い映像は見えにくく、周囲の明るさに紛れやすいうえ、ノイズがあるとそれにマスクされてしまう。ディスプレイにも高性能なものが必要だし、きちんと表示させようとすると、その使い方にもある一定のルールが求められてくる。そのルールが、環境を整えることであり、映像イコライジング(=画像調整)なのだ。

「黒レベル」調整の目安(0/5/10)チャートの場合
「黒レベル」上げすぎ
5%と10%の明るさの差が大きい。ここで使っているディスプレイは、ソニーの局用ピクチャーモニターBVM-D24E1WJ。DVDプレーヤーはパイオニアDV-S969AViで、プログレッシブ再生している

輝度レベル0%とは、これ以上黒い黒はないことを表している。にもかかわらず、グレーとして表示されてしまっているのは正しく調整されていない証拠。一旦「黒レベル」最小まで落して再調整してみよう
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「黒レベル」適正
0、5、10それぞれのステップがほぼ均等に再現されているのがわかるだろうか。ちなみに背景の黒は、3つの領域の中央部分と同じ輝度。このチャートでは5%ということになる

正しい状態では、0%の黒は5%の黒い背景のなかにすっと引っ込んで見えるはずだ。こうして見ると、映画のなかに登場する暗い場面の多くが、輝度レベル10%以下であろうことが想像される。10%は意外と明るいのだ
「黒レベル」下げすぎ
0%と5%の区別がつかない。5%の黒を0%まで引き込んでしまっている。HiViでは、こういう状態のことを指して、「黒がつぶれている」と表現する。映画ソフトの暗いシーンはほとんど再生できないはず

かろうじて10%の領域が判別できる。ここが調整のスタートポイントなら、1ステップずつ「黒レベル」を上げていこう。注意深く観察していると、3つの領域が区別できるようになるポイントが見つかるはずだ
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「黒レベル」調整の前に
したい3つのこと


「黒レベル」チャートの見え方の違い (正しく調整した後の状態)
<ブラウン管>
↑ディスプレイはソニーのプロフィール16×9 KX-36HV50。暗い部分の映像再現力では、ブラウン管方式は未だにトップレベルにある。透明感と艶っぽい黒は、プラズマや液晶方式のフラットテレビには望むべくもない
<液晶ディスプレイ>
↑パナソニックの液晶テレビTH-32LX20を調整して、「黒レベル」を最適と思われる状態にしてみた。上の写真に比べると、0%がグレーがかっているのがわかるだろう。本機では、これ以上黒を沈めることはできなかった
<DLPプロジェクター>
↑シャープのDLPプロジェクターXV-Z11000のハイコントラストモードで、OSのピュアマット・スクリーン(100インチ/16対9)に投写してみた。さすがはコントラスト比5500対1の持ち主。ブラウン管に近い表現力を見せた
 早速、「黒レベル」調整へと進みたいところだが、その前に、しておきたい重要なことが実は3つある。
 ひとつめ。ブラウン管、液晶、プラズマ、そしてプロジェクター……、これから調整しようというディスプレイがどんな方式であれ、必ず暖気運転、あるいはヒートアップして動作を安定させておく必要があるということ。では、ヒートアップのために何をすればいいのかといえば、電源を入れて20分ぐらいなにがしかの映像を流しておくだけだ。黒レベル調整とは、いくつかある小さな映像信号の微妙なレベル差を判別する作業。だから、調整するディスプレイの動作が不安定だと、その差を見逃してしまう危険性があるのだ
 ふたつめ。前回の「コントラスト」調整でも述べたが、調整する部屋の照度を下げること。暗部の微妙な明るさの変化を検知しようと思えば、理想は全暗である。それが不可能なら、HiViの誌面の文字が読めるか、読めないかのギリギリの明るさまで照度を下げる努力をしてほしい。照度が高くなればなるほど映像の暗部は見えなくなるし、低ければ低いほど人間の目はそれに順応して、暗い部分がよく見えるようになる。これを暗順応と呼ぶが、人間はそのために20分ほどの時間を要するといわれている。
 3つめは、これから調整しようとしているディスプレイの映像調整項目のうち、ここで述べている「黒レベル」が、どれにあたるのかを確認すること。その呼び名はメーカー毎に異なるのが現実で、実は統一されていない。製品によっては「明るさ」と表記されていることもある。ここで注意したいのは液晶テレビで、バックライトの輝度調整を「明るさ」と呼んでいるモデルもある。また、そのディスプレイに黒レベルを操作する補助機能が装備されていないか、もしされていたらそれがオフになっているかも同時に確認しておきたい。一例を上げれば、「黒伸長」や「ガンマ(補正)」がそれにあたる。ここでは、前回述べた映像モードを「映画」もしくは「標準」とした状態で、「コントラスト」を合せた後のステップとして解説していく。もうひとつ、DVDプレーヤーの映像調整機能もすべて標準(デフォルトもしくは工場出荷状態)になっているか確認しておこう。

黒再現の限界を見極める
それが調整の出発点だ


 では、HiVi CASTの「ビデオチューンナップ」メニュー画面から「コントラスト」を選んで調整に入ろう。ナレーションに耳を傾けていると、やがて前回の「コントラスト」調整用チャートとはまったく逆パターンの画面が現れて静止画となる(タイトル1/チャプター8)。
 調整の第1ステップは、この「黒レベル0/5/10」チャートを表示させた状態で「明るさ」を最小にしてみること。一般的なテレビやプロジェクターなら、画面中央の3ステップの境界線が判別できなくなっているはずだ。ここで重要なのは、その部分よりも黒い黒は表現できないということを理解することだ。プラズマや液晶テレビでは、グレーがかって見えるかもしれないが、それがそのテレビの基本的な限界であり、どれほどの映像イコライジングテクニックを持ってしても、改善はできない。(液晶テレビには前述のバックライトの輝度調整という手段は残されている)。ちなみに、ここでいう0、5、10というそれぞれの数字は明るさのパーセンテージ(%)であり、IREという単位で呼ばれるものと同一だ。
 第2ステップでは、ここから1クリックずつ「黒レベル」をあげてみる。すると、徐々に3つの領域の境界が見えてくるだろう。この境目がきちんと判別でき、なおかつ0%の黒が先ほど「明るさ」を最小にした状態から明るくならないポイント、それがすなわち「黒レベル」の最適点ということになる。おそらく、この「黒レベル0/5/10」チャートは楽々クリアできたはずである。
 では、続いて次のチャプター「黒レベル0/3/5」へとジャンプしてみよう。今度はどうだろうか。対象となるディスプレイが暗い部分で素直な表現力を持っているとすれば、この3つの領域それぞれの明るさの変化は等しいステップとして感じられるはず。0と3の間にはっきりとした輝度差があるなら、「黒レベル」を1ステップだけ下げてみよう。まだ境界が判別できるだろうか?
 逆に、「黒レベル」をいくつかのステップ上げなければ3つの領域の境界が判別できない場合は、0%の黒を保ったままで3%以下の暗部を表現することは不可能ということになる。
 ここをクリアしたら、最後に「黒レベル0/1/2」チャートにチャレンジしてみよう。何の手も加えずに、この3つの領域の境界線が判別できるなら、そのディスプレイはたいへん優れた暗部描写性能を持っているといってよい。
 さて、ここまで「黒レベル」について、HiVi CASTを使った調整法を解説してきたが、重要なのは0%の黒を保つということだ。「黒レベル0/1/2」チャートのすべての境界線が判別できるようにと黒レベルを上げてしまっては、0が5や10になるだけで、「黒レベル」の調整にはならない。もっとも暗い黒からもっとも明るい白まで、その光のダイナミックレンジを狭めるだけだ。つまり、黒を正しく調整するということは、白を際立たせることでもあるのだ。
 前回お届けしたレッスン1、そして今回のレッスン2。この2回で白と黒に関する基本的な調整をマスターしたことになる。もし、ここまでで理解できない部分や質問があれば、本誌巻末のアンケートハガキ、もしくはHiVi WEBのCONTACT USにてお寄せいただきたい。この場を通じて、お答えしていきたい。次回からは、色に関連した調整へと進むことにする。

「黒レベル」調整に役立つテスト信号 (HiVi CASTに収録されています)
「グレースケール」
↑4段階のグラデーションチャートの他に、左半分には垂直方向に伸びる3本のストライプを持つ。この部分を使うことで、黒レベルの設定が可能。同時に、コントラストにどんな影響をおよぼすかも観測できる
「ブラックレベル」
↑0.4%は、計算上、8ビットで表現できる最小輝度変化量。さらに面積が徐々に大きくなったり、背景の輝度が反転したりするので、平均輝度レベルによって黒レベルをアクティブにコントロール回路の働きが分析できる
「ブラックバックグラウンド」
↑これはビデオチューンナップ本編でも使われた。背景は0%の黒。そこで黒いコスチュームの女性がポーズをとる。背景に洋服がとけ込んでいないか、髪の毛との分離はしっかりしているか。調整の巧拙が問われる映像だ
「フェードアウト」
↑ハイビジョン撮影時、スタジオの照明を落しながら収録した映像。「黒レベル」という観点でこの映像をみるなら、背景の変化に注目したい。明るさが落ちていくとき、特定の暗さでノイズが目立つことがないだろうか

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